評価損(格落ち損)についてご説明します

評価損を請求可能な場面、請求可能な金額

評価損とは

 事故後修理をしたものの事故前と同様の状態に復元できない損傷が残る場合があります。
 この損傷は具体的評価損と呼ばれます。

 

 損傷はなくなったとしても、事故歴がついたことにより経済的評価が下落した場合があります。
 この下落した経済的価値は抽象的評価損と呼ばれます。

 

 

 

評価損が賠償の対象となるか

具体的評価損の場合

 賠償の対象になります。

抽象的評価損の場合

 賠償の対象としない判例、賠償の対象とする判例があり、画一的ではありません。

 

 否定する判例の主な論拠は、計算上経済的価値が下落した場合でも、その下落はあくまでも潜在的・抽象的なものにとどまる、というものです。

 

 肯定する判例の主な論拠は、事故歴がある車両は事故歴がない車両に比べて売却価格が廉価になるという取引実態の存在です。

 

 ただし、肯定する判例も無制限に肯定するわけではありません。
 以下のような一定の要件を設けて、限定的に肯定しています。
・ 国産車であれば初度登録日より2年以内、外車であれば初度登録日より3年以内に事故被害にあったこと。
・ 一般市場において「事故車」として取り扱われる程度の損傷を受けたこと。
・ 資産性が認められる車両であること。

 

 

評価損の算定方法

具体的評価損の場合

 事故前の経済的価値と事故後の経済的価値との差額が損害であるとされることが多いようです。

抽象的評価損の場合

 事故発生以前に車両を売却する具体的な予定があったと認められる場合には、その見積金額と事故後の見積金額の差額が賠償となります。

 

 事故発生前に車両を売却する予定がなかった場合の算定方法としては、修理費用の何割かを評価損とする算定方式が主流です。
 おおよその判例は修理費用の1割から3割程度の金額を評価損としておりますが、判例の中には修理費用の4割、5割、10割とするものも見当たります。修理費に対する割合が高くなる要素としては、初度登録から事故日までの期間が短いこと、事故車が高級車であること、などが挙げられます。

 

 

仮の見積金額を前提にしての評価損は請求できない

 買取見積書を取り、また被害に遭わなかったことを仮定しての買取見積書を取ったうえで、両見積金額の差額を評価損として請求したいという相談をよく受けます。

 

 しかし、この差額を評価損として請求したとしても裁判所で認容される見込みは非常に乏しいです

 

 その理由は、事故車である場合と事故車でない場合の売却金額の差額は車両の売却日によって大きく変動するところ、事故の発生当時において車両の売却時期は未確定だからです。

 

 例えば、売却時期が事故直後の場合、事故車である場合の売却価格は250万円、事故車でない場合の売却価格は300万円とします、この場合差額は50万円です。
 一方、同じ車両の売却時期が事故から8年後だった場合、事故車である場合の売却金額は20万円、事故車でない場合の売却金額は30万円とします。この場合の差額は10万円です。
 事故車両をいつ売却するかによって、売却金額の差額は大きく変動するのが通常です。
 事故発生当時において車両の売却日は未確定だったにもかかwらず、売却金額の差額は50万円だと断言することはできません。10万円にとどまる可能性も十分に認められるのです。
 そのような状況のもとにおいて差額を50万円だったと判断するわけにはいかないのです。

弁護士窪川亮輔

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