時価額が修理金額を下回る場合、賠償額は時価額の限度にとどまります。

時価額を上回る修理金額は支払われない

 

 

 損害賠償とは、不法行為によって喪失させた利益を同価値の金銭の支払いをもって填補する(穴埋めをする)というものです。

 

 事故によって物が破損した場合、修理しなければその経済的価値は下落します。
 破損した物が修復できる場合、破損した経済的価値の下落分と修理費用金額とは等しいのが通常です。
 したがって、加害者には原則として修理相当額の金銭を賠償するべき義務があります(ただし、賠償すべき範囲は自己の過失相当分に限られますが。)。

 

 もっとも、一般的に、物の経済的価値は時間の経過とともに下落していきます。
 また、物は価値は使用によっても下落していきます。

 

 経済的価値が下落した結果、物が破損した当時の経済的価値(これを時価額という。)が、修理費用額を下回る事態が生じる場合があります。

 

 判例は、時価額が修理費用を下回っている場合、時価額に相当する金銭を支払えば損害賠償として足りるとしています。

 

自動車の場合

 年式による相場価格、走行キロ数、車検の残り月数、整備状況、特別仕様・付属品の有無、使用頻度、事故歴等の事情に基づく総合判断です。
 年式による相場把握にあたっては一般的に「自動車価格月報」(通称レッドブック、オードガイド社)、「中古車価格ガイドブック」(通称イエローブック、財団法人日本自動車査定協会)、「建設車両・特装車両標準価格表」(全国技術アジャスター協会)などが参考とされます。
 自動車販売業者による販売価格(ネット、チラシ、雑誌など)も重要な参考資料となる場合があります。

その他の物の場合

 運転者・同乗者が着用・携帯していた衣服、時計、携帯電話、パソコン等が事故によって破損される場合があります。
 これらの時価額は減価償却の考えに則って算定するのが一般です。

弁護士窪川亮輔

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