既存傷害があっても損害賠償請求が可能な場合はある。

既存傷害にもかかわらず損害賠償請求が可能な場合

既存傷害とは

 過去の交通事故が原因となって残存し、かつ自賠責法上の等級認定がされた後遺障害のことを既存障害といいます。

 

 このページでは、既存傷害のある被害者がさらに別の事故を原因として後遺障害を背負ってしまった場合の損害賠償関係について触れて行きたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

既存障害がある場合の後遺障害に関する自賠責保険や任意保険会社の取扱い

 既存障害と今回の事故による後遺障害とが身体の部位や態様において同一のものであるか否かで、自賠責保険や任意保険会社の対応は異なります。

 

部位や態様が別個である場合

 例えば、既存障害が右足の可動域制限、新たな事故による後遺障害が右手のしびれといったケースです。
 自賠責保険は、新たな事故による後遺障害が自動車損害賠償保障法施行令記載の別表記載の各等級に該当するかどうかを認定します。
 任意保険会社は自賠責保険の認定内容に応じて損害賠償金を支払います。

部位や態様が同一である場合

 たとえば、既存障害が右手のしびれ、新たな事故による後遺障害が右手のしびれといったケースです。
 この場合、自賠責保険は、新たな事故による後遺障害に関して認定される等級が既存障害に関して認定された等級を上回らない限り、非該当との認定しかしません。

 

 新たな事故に関し認定されるべき等級>既存障害に関し認定された等級→新たな事故に関し認定されるべき等級が認定される。
 新たな事故に関し認定されるべき等級≦既存場外に関し認定された等級→非該当

 

 任意保険会社も自賠責保険の運用に従い、新たな事故による後遺障害に関して認定されるべき等級が既存障害に関して認定された等級を上回らない限り、損害賠償金を支払いません。
* なお、、新たな事故による後遺障害に関して認定された等級が既存障害に関して認定された等級を上回る場合でも、支払いを受ける自賠責保険金額や損害賠償金額は、新たな事故による後遺障害に対応した自賠責保険金あるいは損害賠償金から既存障害に対応した自賠責保険金あるいは損害賠償金を差し引いた額となります。

既存障害がある場合の後遺障害に関する裁判所の取扱い

同一の既存障害がある場合の判例の取扱い

 判例は、自賠責保険や任意保険会社と同じ取扱いはせず、実質的な判断をもって損害賠償金を算定しています。

 

 すなわち、新たな事故による後遺障害に関して認定される等級がたとえ既存障害に関して認定された等級と同一もしくは低いものであったとしても、新たな事故による後遺障害に関する損害賠償請求を認容することがあります。
 その場合とは、既存障害が時間の経過によって消失もしくは軽減していた状況のもとで、新たな事故によって既存傷害と同一の後遺障害が発生もしくは既存障害が増悪した、といった場合です。
 わかりやすくいうと、時間が経過して症状がなくなったか、軽くなっていたにもかかわらず、新たな事故のせいでまた症状が出たあるいはひどくなったという場合です。 

 

 したがって、既存障害を理由に自賠責保険や任意保険会社から保険金の支払いが拒絶されたからといって、必ずしも諦める必要はありません。
 訴訟提起をすれば、後遺障害にかかる損害賠償請求が認容されることもあります。

弁護士窪川亮輔

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