交通事故の加害者側に治療費や休業損害金などの損害を賠償請求できるにもかかわらず、労災保険に対して保険金の請求をすることのメリットはあるのでしょうか。
この点を確認するためには損害賠償金の特性と労災保険金の特性をきちんと把握しなければなりません。
損害賠償金の特性
被害者に何らかの過失が存在すれば、過失相殺減額されてしまう。
相手方が無資力かつ無保険である場合には、実際に損害賠償金の支払いを受けることが困難である。
労災保険金の特性
労災保険から受け取る保険金については過失相殺減額は適用されません。
労災保険金からは実際の損害額に加えて支払われる特別な支給金があります。
労災保険は相手方の資力や保険の加入に影響を受けない保険です。
労災保険へ請求することのメリット
以上をふまえて、労災保険に対し請求するメリットを整理してみます。
@被害者側にある程度の過失が存する場合に、 過失相殺減額分を労災から支払ってもらえる可能性がある。
ここに可能性があるとの結論にとどめているのは、労災保険から支払われる休業保証給付額は休業損害額の60%にとどまり、過失相殺減額をされた損害賠償額>労災保険額となる場合があるからです。
仮に被害者の過失割合が70%であれば、相手方からは過失相殺減額の結果30%の休業損害金しか支払いを受けることができませんから、残り30%は労災保険から休業補償給付として受け取ることができます。
しかし、仮に被害者の過失割合が20%にとどまる場合、相手方側から80%の休業損害金が支払われることになりますから、労災保険から休業保証給付を受け取ることができません。
A労災に対し請求をすれば、損害賠償金に加えて、さらに特別支給金を受けることができる。
B加害者が無資力かつ無保険であるために、損害賠償金の回収が困難である状況であったとしても、労災保険で損害賠償金の一部の支払いを受けることができる。
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