交通事故で過失割合が争点となった場合の解決方法を説明します。

過失割合が争点となった場合の解決方法

過失割合が争点となる理由

 そもそも、過失割合が争点となる主な理由は2つあります。

評価の相違

 一つめは、評価の相違です。
 各当事者が主張する事故態様が同じものだったとしても、事故に対する評価が異なってしまえば、それぞれの当事者において過失割合に関する意見が異なってしまいます。

 

 たとえば、十字路交差点で直進車と右折車が事故を起こしたとします。
 右折車は直進車を優先させなければならないという道路交通法の規制があります。
 この規制を前提にして、右折車側の責任はもっと重いはずだと考えて、右折車側が9割だと考える方がいるかもしれません。
 逆に、道路交通法の規制があるといっても、道路上での事故はお互い様である、それほど右折車側の責任は重いものではないと考えて、右折車側の責任は7割と考える方がいるかもしれません。
 この場合、一方は過失割合を直進車側1割、右折車側9割と主張しますが、他方は直進車側3割、右折車側7割と主張することになります。

 

 お互い相容れない主張をする結果、過失割合が争点となってしまいます。

事故態様に関する認識の相違

 二つめは、事故態様に関する認識の相違です。
 各当事者が異なった事故態様を主張していれば、当然主張する過失割合も異なってしまいます。

 

 たとえば、交差道路から信号機のある十字路交差点に進入してきた直進車同士の事故を思い浮かべてください。
 お互いが交差点に進入当時対面信号が青信号だったと主張し、自分の過失割合も0だと主張します。
 もちろん、どちらの対面信号も青信号であることなどありえず、どちらの過失割合も0となることなどありません。

 

 お互い相容れない主張をする結果、過失割合が争点となってしまいます。

 

 

 

 

過失割合の解決方法(価値判断の違いにより過失争点となった場合)

 裁判所は、別冊判例タイムズ38「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」や、同書に載っていない事故態様の場合には過去の判例を参照して、当事者の過失割合に関する結論をだします。

 

 どなたでも判例タイムズは確認できます。
 また、交通事故に精通した弁護士であれば、書籍や判例検索システムの利用によって、相談者の事故と同類型の事故態様を扱った判例を検索できます。

 

 調査をもとに判決になった場合の過失割合の結論を予測します。

 

 その予測を相手方に伝えることによって、相手方が了解し、示談できる場合が多くあります。

 

 ただし、それでも、相手方が了解しない場合はあります。
 その場合、訴訟提起しかありません。
 判決内容は、予想した結論通りのものになるのが一般的です。
 裁判官が早期に和解を勧めてくることもあり、それほど裁判手続も短期に終結する傾向にあります。

 

 

 

 

 

解決の方法(事故態様に関する認識の相違によって争点となった場合)

 当事者各々が異なる事故態様を主張する場合、各当事者は自らが主張する事故態様が真実であることを証明しなければなりません
 自らの主張が真実であることを証明できない限り、裁判所は、過失割合に関する主張にも耳を傾けもしません。

 

 さて、証明手段には、物証(客観物による証明)と人証(人の供述による証明)があります。
 まずは物証と人証からご説明します。

 

物証

 物証として、防犯カメラやドライビングレコーダによる映像記録、車両の損傷部位の撮影写真、道路の擦過痕、ブレーキ痕などが挙げられます。

 

 物証は事故態様に関する証明手段としては非常に強力です。
 物証次第では裁判所の判断を十分に予想することができます。

 

 しかし、有力な物証が存在するケースはそれほど多くはありません。

 

人証
 

 人証とは、人による供述です。

 

 目撃者による目撃証言は、事故態様に関する証明手段として非常に強力です。
 しかし、目撃者がいるケースはわずかです。

 

 事故の当事者である本人の供述も人証です。
 しかし、裁判所は、「当事者であれば自分に有利なことを供述するのは当然だ。」という経験則を念頭に置いています。
 その関係で、当事者本人の供述の信用性は第三者の供述の信用性に劣ります。

 

 

 

 

 それでは、過失割合が争いに関する解決の流れを説明していきます。

 

 事故態様が争いとなる状況でも、有力な物証や有力な目撃者が存在するのであれば、裁判所が認定する事故態様や判決になった場合の結論を予想することができます。

 

 そこで、物証や目撃者をきちんと把握して、それぞれの証拠からどのような事実が証明できるのかをよく検討します
 検討の結果、自らが主張する事故態様を証明可能であると判断できるのであれば、その旨を相手方に伝えます。
 相手方がこちらの主張する過失割合に了解し、示談をもって解決できる可能性があります。
 相手方が了解しない場合、訴訟提起しかありません。しかし、こちらに有利な過失割合を認定する見込みは高いはずです。

 

 一方、証拠から十分な事実が証明できないと判断される場合、証人尋問をしてみないと解決の見通しが立ちません。
 いくら時間が経ったとしても、相手方がこちらの主張する事故態様や過失割合を了解する見込みは乏しいです。
 時間が経ったから譲歩しようという方はそれほどいません。
 よって、証拠が乏しい状況ではあるものの、相手方の過失割合にはどうしても納得できないというのであれば、早々に訴訟提起を検討してもよいかもしれません。

 

過失割合が問題となった場合

 桜風法律事務所は1000件以上の交通事故を解決してきました。
 そのうちの多くは過失割合を争う事件です。

 

 これまでの経験に培われました知識をもって、過失割合につきましても適切な見通しを立てることができます。
 過失割合でお困りの状況であれば、お気軽に桜風法律事務所までご相談ください。

 

 

 

弁護士窪川亮輔

関連ページ

事故直後の約束は過失割合に影響しない
過失相殺の本質論に触れつつ、事故直後の当事者間の約束は通常過失割合に影響を与えないことを説明しています。
事故が起こったら基本的過失割合の把握に努める
交通事故が起こった場合、基本的な過失割合の把握が重要であることや基本的な過失割合の把握の方法を説明しています。
身体的事情や心因的事情を理由とする賠償金の減額
交通事故損害賠償事件における訴因減額について説明しています。

ホーム RSS購読 サイトマップ