傷害慰謝料の算定にあたって通院日数を重視される場合について説明しています。

通院日数が少ないと、慰謝料は低額になる傾向にある

裁判所による傷害慰謝料額の算定方法

 

 裁判所は、怪我の部位や態様、通院相当期間を主な判断事情として傷害慰謝料額を算定します。

 

 しかし、裁判所は、どんな場合でも、通院日数を考慮せず、通院相当期間だけを考慮して慰謝料額を決定するわけではありません。

 

 通院相当期間が長くとも、通院が少ない場合、「それほどの重傷ではないのではないか。」「精神的苦痛は小さいのではないか。」との推定が働く場合があるからです。

 

 上記の推定が働く場合、実際に通院した期間ではなく、通院日数に3.5を乗じて算出した日数を通院相当期間とします。

 

 

通院日数に3.5を乗じて算出した日数を通院期間とするのはどのような場合か

 いかなるケースにおいて通院日数に3.5を乗じて算出した日数を通院相当期間とするのか、その確定的な基準を示した判例はありません。

 

 しかし、裁判所が拠りどころとする書籍の一つである「交通事故損害額算定基準」(財団法人日弁連交通事故相談センター編。通称「青い本」)には、「通院が長期化し、1年以上にわたりかつ通院頻度が極めて低く1ヶ月に2〜3回程度の割合にも達しない場合、あるいは通院は続いているものの治療というよりむしろ検査や治療経過の観察的色彩が強い場合など」は実際の通院期間そのものを傷害慰謝料算定事情としての通院期間とするのは妥当ではない」旨記載されております。
 裁判所の判断の枠組みを推測するにあたって上記の記載は非常に参考になります。

 

 ただし、通院した期間が1年未満である場合でも、1ヶ月の通院頻度が少なければ、通院日数に3.5を乗じて算出した日数を通院期間としている判例もあります。

弁護士窪川亮輔

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