加害者が無保険である場合特有の問題点
自動車保険に加入していなければ、加害者は自分の資産の中から損害賠償金を支払わなければなりません。
けれども、加害者に被害者の損害を賠償するだけの十分な資産があるとは限りません。高額な損害に比べて加害者の資産が乏しい事例は無数にあります。
加害者は、被害者と自分で交渉しなければなりません(自動車保険に加入していれば、保険会社の担当者が交渉してくれます。)。
ところが、加害者、被害者ともに損害賠償法に関する知識が乏しいために、交渉が難航しがちです。
これらの理由から、加害者が無保険の場合、いつまで立っても示談ができず、損害賠償が実現しないといった事例は少なくありません。
弁護士に依頼した場合の回収までのプロセス
@相手方と示談交渉する
示談が成立し、相手方が任意に賠償金を支払ってくれれば、その時点で解決です。
もちろん示談交渉は被害者ご自身でも可能ですが、弁護士に依頼された方が、交渉が成立しやすくなる、あるいは加害者が交渉のテーブルにつきやすくなる傾向にあります。
政府補償事業に請求する
相手方不保険の場合、政府補償事業に対して自賠責から支払われる金額と同等の金額の支払いを受けることができます。
A訴訟を提起する
相手方が示談交渉に応じない、あるいは、示談締結にもかかわらず加害者が損害賠償金を支払われない、といった場合、訴訟提起による損害賠償の実現を目指します。
示談交渉では逃げていた加害者も、訴訟になれば出廷するケースが多くあります。
加害者が出廷するのであれば、和解に向けた話し合いも可能です。
なお、訴訟を提起したのだから、和解などするつもりはない、判決を取り、強制執行をしたいと考えている方もおられますが、加害者側が無資力の場合には強制執行をしても無意味に終わってしまいます。
加害者が無資力の場合には、和解をもって柔軟に対応した方が、強制執行をするよりも、多くの損害賠償金を受け取ることができる可能性があると考えます。
B強制執行手続を申立てる
和解が成立した、あるいは判決が下されたとしても、加害者は損害賠償金を支払ってこない場合があります。
その場合、強制執行手続をもって加害者の資産を差し押さえ、換価して、損害賠償金に充当することになります。
差し押さえの対象となる一般的な財産として、預貯金、自動車、給与、不動産などが挙げられます。
なお、弁護士は、加害者についてどこにどれだけの財産があるのか調査する能力を十分に持ち合わせているわけではありません。
強制執行により十分な利益を得ることが出来るか否かは、やってみないと分からないケースが大半です。
C強制執行手続を利用しても損害賠償金の全部もしくは一部が回収に終わった
この場合、弁護士として尽くす手段はなく、任務終了となってしまいます。
関連ページ
- 事故の相手方が無保険である場合のリスクを回避する方法
- 交通事故の加害者が無保険であった場合、加害者からは損害が賠償されないリスクがあります。そのリスクを回避する諸制度について説明しています。
- 交通事故でも国民健康保険は利用できる
- 交通事故による怪我の治療を受けるにあたっても、国民健康保険の利用が可能であることを説明しています。
- 自転車での交通事故に備えて
- 自転車によっても重大な不法行為責任を負う場合があること、自転車賠償保険への加入が有益であることを説明しています。