役員報酬額のうち全額を請求できないとは限らない
会社役員であっても、事故により休業し、収入を逸失した場合、逸失した収入分を請求されるのは当然のことです。
けれど、会社役員の報酬額が同年代同性の一般的な収入金額よりも高額であったり、また会社役員の普段従事されている職務内容によっては、休業損害金として認容される金額が報酬額のうち何割かの金額に制限される場合があります。
労務対価部分と利益配当部分
休業損害金の実質は、本来就労していれば得られていたはずの経済的利益です。
就労しても、就労しなくても得られる経済的利益は休業損害金にはあたりません。
この点、会社役員が受け取る役員報酬の中には、
会社に提供した労務への対価としての性質を持つ部分(労務対価部分)と、
会社からの利益配当の性質を持つ部分(利益配当部分)、
が含まれているものだと一般的に考えられています。
労務対価部分は、就労していなければ得ることができない経済的利益ですから、休業損害にあたります。
一方、利益配当部分は、被害者が役員の地位にある限り就労しなくとも得ることのできる経済的利益ですから、休業損害にあたりません。
判例のとる結論や判断方法
判例がとる結論や判断方法は一つではありません。
判例がとる結論
年齢別平均賃金額を労務対価部分としたもの、役員報酬額のうち50%〜100%の幅での金額を労務対価部分としたものなどがあります。
判例がとる判断方法
多くの判例が採用する判断手法は、以下に記載する諸事情を基礎事情としての、総合的な判断です。
・会社の業種
・会社の事業規模(売上額、営業利益の額・従業員の数)
・他の従業員の賃金額
・他の従業員の就労態様
・被害者の就労態様
・被害者の年齢および同年代の平均賃金額
・被害者の株式所有の有無およびその数
・同族会社の肯否
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